「神戸スイーツ」で地域活性化を図ろうという甲南大学・西村順二研究室のスイーツプロジェクトにまた新たな動きが!今回は、神戸市東灘区に本社のある老舗洋菓子メーカー「モロゾフ株式会社」とタッグを組み、同研究室2年生ゼミ生(現3年生ゼミ生)が日本ではまだなじみの薄いイースターについての共同研究を実施。イースター向けスイーツを広げるためのコミュニケーション戦略を練りました。
西村教授スイーツプロジェクトは3、4年ほど前から取り組んでいるもので、甲南大学限定スイーツやコラボ商品の開発などで実績を重ねてきました。そして2019年に甲南大学の母体である甲南学園が100周年を迎えるにあたって、満を持してオリジナルスイーツの開発をモロゾフさんに依頼したのです。そのスピンオフとして、イースタースイーツのコミュニケーション戦略を考えさせていただくことになりました。
田口さん日本のバレンタインは、実はモロゾフがはじめたものです。それに比べると、イースターはまだ社会に浸透していません。もっとイースターの知名度をあげてバレンタインやハロウィーンのように盛りあげたい。そこで、今回のプロジェクトを通じて甲南大学さんと共同研究させていただくことにしました。
向家さんプロジェクトがスタートしたのは2年生の終わりごろ。わたしたちのようなゼミに入ったばかりの学生に、全国的にも有名なメーカーさんからお声がけいただいたことがとても嬉しく思いました。
田口さん社内の人間だけで考えると、“社内脳”というか、どうしても考えが固まってしまいます。学生さんには柔らかい発想をいただきたいと期待していました。ゼミにお伺いして話しをした後は、ほとんどお任せ状態だったので大変だったと思います。
深町さん期待されていることはわかっているのですが、「どうしたら!?」と悩みました。でも、自分たちのためにモロゾフのみなさんが時間を割いてくださり、貴重な経験をさせていただけたと思っています。
西村教授今回、学生に伝えたことは2つ。1つは、なぜ一流企業の方々が我々に声をかけてくださるのかを考えること。若者らしい尖がった発想が求められているのであって、学生が丸まった案をだしても意味がないんですね。もう1つは、まずは現場を見ること。課題も答えも、現場にあります。現場で見聞きしたものと講義やゼミでの理論研究、その両方を行き来しながら学んでほしいと思います。
深町さんこのプロジェクトに参画するまで、わたしたちもイースターのことを良く知りませんでした。そこで、世間の人はどうなのかを知るためにアンケートで認知度調査をおこないました。結果はわたしたちとおなじく言葉は知ってるけれど、詳しくは知らない方がほとんどでした。そこで、知らないことを逆手にとって、日本独自のイースターをつくればと発想転換し、日本の春の行事とイースターをかけあわせて表現する方向にたどり着きました。中間発表ではまず方向性のみをお伝えして、最終報告でさらに実施内容をまとめてご提案しました。
田口さん中間発表でも、提案内容だけではなく、それに至るまでのプロセスをしっかり組み立てられていたので驚きました。わたしが学生だったときに同じことが出来るかなと…(笑)。
向家さん最終的にモロゾフさんにご提案したのは、街頭でデジタルサイネージを用いて宣伝する案、メッセージカードに動画をつけて送るプロモーション案、そして、店頭POPに使用するキャッチコピー「イースターdeいいスタート!」です。イースターは春の行事であり、春は日本ではスタートのイメージ。このコピーを通して、イースターがなにかのはじまりであることを伝えたいと思いました。
西村教授本来の宗教上の意味付けを尊重しつつも、4月というタイミングを意識して、イースターの日本的な価値はなんなのかを伝えることが大切でした。ただスイーツを売るのではなく、スイーツを通してイースターの価値を提供するわけです。
田口さんいただいた案はどれも斬新でしたが、準備のための時間的な余裕もなく、今回はキャッチコピーを採用し、3月23日から4月1日のイースター当日まで、三宮センター街ショップなど6店舗でパネルやケース上POPなどに使わせていただきました。パネルを見て商品を買っていただいたお客様もいらして、少しでもイースターのことを伝えられたかなと思います。
向家さんキャンペーンがはじまるとお店に行って現実化されているのを見て、感動のあまりみんなでワイワイ言いながら店頭の写真を撮ったり(笑)。実際に形にしていただいたのが何よりも嬉しかったです。
深町さん社会人の方を相手にプレゼンをするのも滅多にないことですし、プロジェクトを通して一つひとつ課題を解決しながら完成させる楽しさも味わえました。
田口さん社長はゼミ生のプレゼンに興味をもって耳を傾け、特に「イースター de いいスタート!」のキャッチコピーを使ってのプランを推されました。
西村教授社長がわざわざ大学に来られて、学生のプレゼンを聞いてくださることなんてなかなかありません。好意的なコメントもいただけて、学生には大きな経験になったと思います。
田口さん今回は実現できなかった案のなかにも、今後参考にさせていただけるものがありました。機会があればまたお声がけしたいと思っています。
西村教授このプロジェクトは「フィールドワークから学ぶマーケティング」というゼミの一環として行っているもので、講義と現場での経験を通してマーケティングロジック(理論)とマーケティングインサイト(発想)を学ぶことが狙いです。発想は、現場で人と交流してこそ大きく広がるもの。卒業までに理論と発想の両方をしっかりと身につけて、堂々と社会に出てほしいと考えています。