学びの場は大学の中だけ?いいえ。街に出て、地域の人たちの“生の声”を聞き、課題や解決策を考える。甲南大学には、そんなリアルな学びがあります。堺市と連携するプレミア・プロジェクト「海でつながる―甲南大学と堺市」もそのひとつ。学生たちの生み出すアイデアが、堺市の活性化につながれば…と、大いに期待されています。
「海でつながる―甲南大学と堺市」は、KONAN プレミア・プロジェクトの一環として2015年にスタート。
堺市の老舗企業の方などによる公開講演会や経営者の方に甲南大学を見ていただくラボツアーを行う他、学生たちが堺市の魅力を探る学生研究支援プロジェクトを立ち上げました。実はこのプロジェクトは単位とは関係がないのですが、積極的に学びたいという12名の学生が参加。仁徳天皇陵(大仙古墳)や千利休と与謝野晶子の記念館「さかい利晶の杜」などを見学したり、市役所の方や老舗企業の方にヒアリングを行って、市の活性化や伝統産業の復興に役立つ提案をしようと研究を進めています。

森安さんプロジェクトに参加しようと思ったのは、ただ授業を受けるだけでは周りと何も変わらないと思ったからです。他の人がしていない、何か特別なことをしたいなと。座学にはない魅力を感じました。
浪花さん私は国際交流センターでボランティアをしていて、留学生の方から日本の文化や言葉について質問されることがあるのですが、あまりうまく答えられないのです。日本に住んでいると、当たり前になりすぎて意外と日本のことを知らない。このプロジェクトを通して、日本の文化や伝統産業をもっと理解したいと思いました。

森安さんこれまでに3回フィールドワークを行い、和菓子職人さんや刃物製作所の社長さんなど、普段は会えない方々から直接お話を伺うこともできました。皆さん熱い思いをお持ちで、質問をするとそれ以上に返してくださいます。その思いに応えたい、もっともっと良い提案をしたいと強く感じました。
浪花さん刃物のような身近なものが実は堺市の伝統産業であり、そして今も続いている。そんなことを実際に現地で見聞きすると、物事に対する考え方が変わりますね。法学部の授業は座学が中心で、現地まで行って調べることがないので新鮮でした。堺市のことだけでなく、いろいろなことに対して視野が広がったように感じます。
森安さん確かにそうですね。これまでは常に受け身でしたが、プロジェクトに参加して自分から動けるようになりました。ただ授業を聞くだけでは身につかない力だと思います。

浪花さん今は、フィールドワークをもとに各自で報告書をまとめているところです。私は茶道の経験があるので、千利休や和菓子をテーマに取り上げようかなと。海外からの観光客に向けたアプローチ方法なども探ってみたいです。
森安さん私は、伝統的な堺包丁の需要が減りつつあると聞いたので、それを何とか復活させる方法を提案できれば。自分が簡単に思いつくようなアイデアはすでに実施済みだったりするので、なかなか難しいですね。浅い考えで終わるのではなく、学生らしく突きつめて考えてみたいです。
浪花さん各自の報告書は最終的にひとつにまとめ、堺市長なども出席されるシンポジウムで発表することになっています。大勢の前でプレゼンテーションを行う経験はあまりないので緊張しますね。

今回のプロジェクトは、「まだ実社会に揉まれていない学生だからこそ、見えてくるものがある。枠にとらわれず自由に発想できる」という熱い期待の込められたものでした。それに応えて少しでも堺市や伝統産業の活性化に貢献したいと、学生たちは自ら意欲的に活動しています。1年弱という期間ですが、それ以上に中身の濃いプロジェクトを通して、学生たちは自分の大きな変化、成長を実感したようです。
堺市と連携したKONAN プレミア・プロジェクトは、これからもさまざまな形で続いていきます。