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    地域から生きた実践知を学ぶ「関西湾岸SDGsチャレンジ」の成果報告会

    2023年12月05日(火) 地域連携新着情報 お知らせの一覧

    チャレンジアカデミー(成果報告会)での最終プレゼンテーション
    (2023年11月12日,岡村撮影)


    さる2023年11月13日(日)、甲南大学にて「関西湾岸SDGsチャレンジ」の成果報告会「チャレンジアカデミー」が開催されました。これは、神戸市、堺市、和歌山市、岡山市、徳島市と連携しながら、各地域の高校生と甲南大学生がチームを組んで、ともに地域の社会問題を調査し、その改善企画を提案するプロジェクトです。朝日新聞社と甲南大学との共催で、2018年から実施しています。大学教員だけでなく、新聞記者がメンターとなって、直接実践的な学びを得られるのが、このプロジェクトの特徴です。

    ●「徳島には阿波おどり以外なにもない」?
    さて、私が指導を担当した徳島チームのお題は、「徳島には阿波おどり以外なにもない」という言説は本当に存在するのか、あるとしたら、それはなぜなのかというものでした。一見、自虐的とも受け止められるこうした言説が、仮に住民対象の愛着度調査で全国最下位という結果につながっているのだとしたら、それは大きな問題です。この問題に挑戦するのは、徳島市立高等学校の2年生4名と、甲南大学生2・3年次生4名のチームです。フィールドワーク(現地調査)では、この言説にまつわる現状や、観光と住民とのかかわりを調べました。詳しくは、2023年9月1日付の「徳島市にてフィールドワーク(現地調査)を実施しました!」をご覧ください。調査の結果、阿波おどりをはじめ、地元の観光の取り組みから、住民は取り残されている可能性が見えてきました。
    そこで、「コミュニティ・ベースト・ツーリズム」という考え方に着目しました。「コミュニティ・ベースト・ツーリズム」とは、地元の観光の取り組みに住民が主体的にかかわる旅の形態です。ややもすると観光は地域経済活性化の側面のみが注目されがちですが、住民福祉の増大をめざす「観光まちづくり」をめざすためには、住民参加は不可欠です。

    ●「子どもフレンドリー」なサステナブルツーリズムの提案
    地域の資源を生かした観光戦略を立案することを目的に、徳島市の内部環境の強みや弱み、外部環境の機会や脅威に整理するSWOT(スウォット)分析をして、SDGs達成に寄与する重要な課題を検討しました。その結果、SDGsを達成することでめざす2030年の徳島市の姿として、①「SDGs未来都市・徳島市」のブランドイメージが強化されている、②「子どもフレンドリー」な機運が高まっている、③住民による徳島県への愛着度が30%高まっている、を掲げました。具体的には、企画①「『子どもフレンドリー』なサステナブルツーリズム」、企画②「移動時間も観光資源に」、企画③「観光が自分事になる体制づくり」という3つの企画でSDGs達成をめざします。「サステナブルツーリズム」とは、訪問客を受け入れるコミュニティのニーズに対応しつつ、経済や社会、環境への環境を十分に考慮する観光を言います。徳島県は、雑誌『FRaU(フラウ)』で全編SDGs特集として取り上げられるほど、SDGsの先進的取り組みを進める県として注目されています。しかし、「子どもフレンドリー」の視点はさらなる充実が求められるため、観光コンテンツを提供する住民やNPO、地元事業者の皆さんのサポートを強化する体制づくりを提案しました。


    高校生と大学生が率直に意見を交換して学び合う
    (2023年7月16日,岡村撮影)


    ●クロスコメントから見える共通課題や各地の創意工夫
    成果報告会は、これまでの研究を発表して審査員や自治体の方から講評を受けるだけでなく、各自治体のみなさんが他の自治体の企画にクロスコメントするのも本プロジェクトの特徴です。コメントを伺っていると、社会課題が共通していること、一方で、各地の独自の創意工夫があることがよく伝わってきます。また、記者メンターの方からも、温かく厳しい応援メッセージをいただきました。
    高校生と大学生がともにプレゼンテーションに臨み、おかげさまで、徳島チームは「観光まちづくりの未来 ~次世代へ繋げる新たな旅のスタイル」にて、神戸市チームと同点で、最優秀賞をいただくことができました。活動をふりかえって高校生は「地元なのに、社会問題の解決策が案外、思いつかなかった」,「大学生も含めて、みんなで団結できたことが楽しかった」、また大学生は「プレゼンテーションの質疑応答がとても上手な高校生がいて、自分もがんばらねばと思った」、「サステナブルツーリズムなどあらたな知識や地域の状況を学ぶことができた。徳島の特徴を生かした企画を考えることが自分たちの課題だったので、形にできてよかった」など、それぞれの気づきや学びを再確認していました。


    多くの人に見守られながら、高校生と大学生はハレの日を迎えます
    (2023年11月12日,岡村撮影)


    ●社会のなかで得る、生きた実践知
     地域住民や事業者の皆さんから、学生は貴重な「生きた実践知」を学んでいます。フィールドワークで協力いただいたみなさんに成果報告会の報告をしたところ、その資料にさらにコメントを寄せてくださいました。知識や経験を惜しみなく共有してくださる姿に、メンバー一同、感動しています。あらためて、地域の皆様には、日頃の教育や研究活動のご理解やご協力に感謝申し上げるとともに、社会のなかで、日々成長している大学生や高校生を、これからも、ともに見守っていただきますよう、引き続きご協力をお願い申し上げます。

    文・甲南大学 全学教育推進機構 全学共通教育センター 
    特任准教授 岡村こず恵

    <参加メンバー>
    森悠(徳島市立高等学校2年生)
    有井智紀(徳島市立高等学校2年生)
    田村唯花(徳島市立高等学校2年生)
    二又はな(徳島市立高等学校2年生)
    石井竜也(甲南大学 経済学部 3年次生)
    丸山莉奈(甲南大学 経済学部 3年次生)
    栗原瞳(甲南大学 経済学部 3年次生)
    中川輝人(甲南大学 経済学部 2年次生)