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    東住吉事件の冤罪被害者・青木惠子さんの講演会を開催

    2019年12月23日(月) 法学部新着情報

     プレミア・プロジェクト「えん罪救済学生ボランティア」の主催で、東住吉事件の冤罪被害者・青木惠子さんを大学にお招きし、講演会を開催しました。
     
     学生ボランティアは、今年度の後期を通じて東住吉事件を研究してきました。甲南高校でも研究の成果を講演会で生徒の皆さんに伝えました。さらに、大学にも青木惠子さんご本人をお招きし法学部の2回生の学生を中心に、冤罪の問題について考えてもらう講演会を開催することになったのです。

     5限の時間帯にも関わらず、大学で一番広い1-42教室は満員でした。

    はじめに、えん罪救済ボランティアの白根愛加さん・三浦莉子さん・今崎光彩さんが、東住吉事件の事件の概要、裁判の経過、再審無罪までの道のり、そして冤罪の原因について20分ほどでまとめてくれました。





    以前の記事と重複しますが、東住吉事件についてご紹介しましょう。

     東住吉事件は1995年に発生した事件です。内縁関係にあった男性と当時31歳だった青木惠子さんが共謀し、青木さんの長女に保険金をかけた上で男性が自宅に放火し、長女を殺害して保険金をだまし取ろうとしたとされました。2人は取調べで当初犯行を自白し、その後否認に転じました。裁判所は2人にそれぞれ無期懲役判決を言い渡しました。

     その後、犯行方法に関する男性の自白どおりの方法で火を放ったらどうなるかという再現実験などが行われ、2人の自白が虚偽のものであったこと、そもそもこの事件は放火ではなく自然に発火してしまったものであったことが科学的に明らかになりました。最終的には再審請求が認められ、事件から21年後の2016年、ようやく無罪判決を言い渡されて冤罪が晴らされたのです。

     ボランティアの学生による事件の紹介のあと、青木惠子さんとの対談を行いました。任意同行から取調べ、取調べで虚偽の自白に至ってしまうまでの経緯、そのときの心情、うその自供書をどのようにして書かされたのか。当時の取調べの生々しい内容は、衝撃的でした。

    青木さんは、無期懲役を言い渡され、判決は確定してしまいます。その後の刑務所での生活、希望を失いそうになりつつも弁護団と支援者によって助けられたこと、無罪を勝ち取るまでの道のり……ある日突然普通の生活が壊され、無実の人が社会から引き離されていく状況には、言葉を失うしかありませんでした。





     「冤罪は誰の身にも起こります。だから、冤罪のことを皆さんに知ってもらいたいのです。家族や友達にも、このことを伝えて下さい」。青木さんの言葉に、学生たちは大きくうなずきました。

     質問の時間も、活発に手が上がりました。講演が終了したあとも青木さんへの質問は続きました。教室に残り、かなりの時間をかけて感想を書く学生も多く見られました。
     単に教室で法律を勉強するだけでは、刑事司法の現実を理解することはできません。辛い経験を時には涙ぐみながら力強いことばで話して下さった青木惠子さん、本当にありがとうございました。

    《法学部教授・笹倉香奈》

    ※東住吉事件についてもっと詳しく知りたい方は、青木惠子『ママは殺人犯じゃない』(インパクト出版会、2017年)などをお読み下さい!