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    たくさんの言葉が響き合うオンライン授業―「メディア文化論」でライブに学ぶコミュニティメディア(その2)

    2020年8月03日(月) 文学部新着情報

     社会学科専門科目「メディア文化論」では、オルタナティブメディアについて多角的に学ぶことができます(その1)。映画監督塩崎翔平氏を招き「映像制作と地域社会」と題したはじめてのWebinar(オンラインセミナー)を実施するにあたって、「メディア文化論」の授業でとりあげている国内外の2つの地域メディアに協力を求めることにしました。

    MEDIA ROCCOの技術協力、多地点配信方式
     1つは、神戸市東灘区に拠点をおくMEDIA ROCCOです。毎週土曜日にインターネットで、地域のさまざまな情報をライブ配信しています。「メディア文化論」1部を担当し、日本のコミュニティメディアについて講義した辻野理花先生は、MEDIA ROCCOの活動に、長年、スタッフとして携わっています。新型コロナウイルス感染拡大防止のためスタジオを利用できなくなり、3月からは各地からの参加者をオンラインでつなぐ「多地点ライブ配信」という方法で番組を制作しYouTube でライブ配信しています。「メディア文化論」の「公開講座」では、MEDIA ROCCOからの技術協力のもとで辻野先生が番組ディレクターとなり、出演者をオンラインでつなぎトークをYouTubeにライブ配信することになりました。受講生と「公開講座」参加希望者には事前にURLを知らせます。YouTubeには、ライブ配信を見ながら随時にコメントも書き込むことができます。受講生は、第1部の授業で学んだMEDIA ROCCOの「多地点ライブ配信のしくみ」を、Webinarにおいては視聴者として番組に参加しながら、リアルタイムで体験することになります。



    米国のコミュニティラジオ番組にゲスト出演
     「メディア文化論」の授業に協力をお願いしたもう1つの地域メディアは、アメリカのコミュニティラジオ局WRFUです。「メディア文化論」2部を担当し、アメリカのコミュニティメディアについて話した西川は、このラジオ局の日本語番組HARUKANA SHOWのスタッフです。毎週、オンラインで日米各地をつなぎ、1時間のラジオ番組を制作しています。塩崎氏にお願いし、HARUKANA SHOWにオンラインでゲスト出演していただき、6月5日にラジオ放送・ストリーム配信しました(HS Podcast No.480)。塩崎氏は日本の高校を卒業後、アメリカの大学に留学し「映画学」を勉強しました。番組では、日米の映像制作の学び方の違いや、東京に一極集中している日本の映画制作の問題につても話してもらいました。WRFUや番組アーカイブにアクセスすれば過去の番組を世界どこからでも聴取できます。「メディア文化論」の受講生は、塩崎氏のラジオトークを聞き、感想や質問を記し、これをまとめて塩崎氏に届けました。



    熱量の高いライブトークショー
     2020年6月16日に行われた「メディア文化論」Webinarは、「ライブトークショー」としての面白さがありました。辻野ディレクターの指示のもと出演者はオンラインでつながり、午前10時40分から生配信が開始されました。西川がWebinarのホスト役となり、塩崎氏をゲストに迎え、なぜ、どのようにあえて地方で2本の長編映画を制作したのかについて、学生からの質問もまじえて話を聞きました。そして最後の20分間に、「メディア文化論」3部を担当している松本章伸先生がトークに加わると、塩崎氏の話が一気に熱気を帯びました。松本先生は、甲南大学を卒業してからニューヨークの大学院で映像制作を学び、帰国後、NHKや民放のドキュメンタリー番組を多数制作してきました(甲南Ch 2018年7月4日)。また、日本のテレビドキュメンタリーの表現形式の歴史社会学を研究されており、授業ではメディアがもつ政治性や新しいデジタルメディアVICEについても紹介しました。視聴率が重視されるテレビ業界で活躍する松本先生と地方を拠点に新しい映画作りを模索する塩崎氏、方向性は異なるけれどもどちらも映像制作のプロです。表現手法についての突っ込んだ議論となりました。限られた時間でしたが、塩崎氏が「もっと話したかったなあ」と繰り返し述べるほど熱い余韻を残して「メディア文化論」Webinarは無事に終了しました。

    塩崎氏と学生たちの対話
     公開講座はMEDIA ROCCOのアーカイブに期間限定で公開され、ライブ配信と録画と合わせて370回ほど視聴され、教室で開催される公開講座よりも多くの人が参加することができました。受講生からの感想をまとめ、塩崎氏に届けました。WRFUからのHARUKANA SHOWとMEDIA ROCCO技術協力のもとでのWebinar、これら2つの「番組」での塩崎氏の話にたいする受講生からのコメントは、A4サイズ70ページほどになりました。学生たちと塩崎氏の対話は、しかし、さらに続きました。7月には、塩崎氏から甲南大学の学生にむけてのA4サイズ12ページにぎっしりと文字がつまった文章が届きました。学生たちから受け取った言葉の一つひとつへの塩崎氏からの応答でした。

    「すぐに答えを求めない」「自分自身と向き合う」
     塩崎氏からのメッセージには、地域での取り組みとして「有限責任事業組合」方式の映画制作についてなど専門的な内容も含まれていました。試行錯誤しながらも自分の好きな道を歩く塩崎氏にたいして、学生たちのコメントには、就職活動や将来にたいする不安やアドバイスを求める声もたくさん記されていました。「すぐに答え求めない」「自分探しではなく、自分自身と向き合う」という塩崎氏からの言葉を学生たちはどのように受けとめたのでしょうか。「メディア文化論」最終回では、受講生たちは塩崎氏からの長文の「手紙」を読み、自分自身のストーリーを感想に記していました。他者にふれ語りがうまれ、ゆるやかにつながる。たくさんの言葉が響き合うオンライン授業となりました。授業にご協力いただいた塩崎祥平氏、MEDIA ROCCO、WRFU、地域の方々、甲南大学の教職員、そして受講生の皆さん、ありがとうございます。

                                     文学部社会学科教授 西川麦子

    ●「大学での出会いからドキュメンタリー制作に至る道:社会学科『研究法入門演習』で卒業生の話を伺う」(甲南Ch 2018年7月4日