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    大学での出会いからドキュメンタリー制作に至る道―社会学科「研究法入門演習」で卒業生の話を伺う

    2018年7月04日(水) 文学部新着情報
     文学部社会学科で入学後すぐの1年生にとって必修の実習科目が「研究法入門演習」です。パソコン教室や図書館を活用した、社会学科での学びの基礎作りの科目ですが、5月29日の授業では、平成17(2005)年度卒業生の松本章伸さん(テレビ・ドキュメンタリーディレクター)にお越しいただき、お話を伺いました。自己紹介と松本さんがこれまでに携わってこられたドキュメンタリー番組の紹介を兼ねた「僕がドキュメンタリーから逃れられないワケ」の後、大学時代の経験から現在のドキュメンタリー・ディレクターの仕事についての様々な話を、社会学科2年生の岩田萌花さんとの対談形式で、語っていただきました。
     
     
     高校生までの松本さんの将来の夢はパイロットになることでしたが、夢半ばに断念。人生で初めて経験する挫折でした。大学に入ることを決め、とりあえず甲南大学を受験しました。入学後、何かやりたいことがあるかというと、全くないという状態で受講したのが、NHKスペシャル「ボクたちずっと一緒だよね~エイズと生きる家族の一年~」のディレクター、坂上香さんが講師の「映像文化論」でした。この授業がきっかけで、ドキュメンタリー制作をやりたいと思うようになったそうです。
     松本さんは、その思いを在学中に実現するべく、行動に移しました。2年生の時に、高校時代に留学したケルンで聞いたドイツの兵役制度と兵役を拒否する若者についてのドキュメンタリー企画を在阪テレビ局に応募し、採択されます。実際にドイツでも取材した作品「ボクには殺せない~ドイツ・兵役制度と生きる男たち~」は、テレビ放映され、年間グランプリを受賞しました(詳しくは、社会調査工房オンライン「4. ビジュアル分析法 4-5 映像制作の現場から(甲南大生体験記)>>>」に記載。
    )。
     卒業後、松本さんはアメリカ、ニューヨークのThe New School大学院に映像制作を学ぶために2年間留学しました。卒業制作として”Granny Power”という、イラク戦争時に若者を戦争に送ることに反対する運動にかかわったおばあさんたちについての30分のドキュメンタリー番組を作りました。デモに参加するおばあちゃんの「声を上げないと思いは伝わらない」という言葉が心に響いたと言います。
     日本に帰国後、映像制作会社のディレクターとして、NHK『NHKスペシャル』、テレビ東京『ガイアの夜明け』、毎日放送『情熱大陸』等のドキュメンタリー番組を制作した後、龍谷大学社会学部コミュニティマネジメント学科で大学と現場をつなぐ活動に携わるようになりました。「コミュニティマネジメント実習」で学生ディレクターが短編ドキュメンタリー映画を制作し、京都の劇場で上映するという試みです。
     
     2年生の岩田萌花さんとの対談では、松本さんの原動力である「人との出会い」、「知りたい、伝えたい」という思いについての印象的な話が次々と飛び出しました。大学では多様な人に出会い、色々な人の色々な経験を聞くという楽しみを知ったといいます。これまで21カ国84都市を訪れた経験のある松本さんですが、現地に取材に行き、企画書とは異なる状況に直面する時もあるそうです。そんな時は、地元の物を食し、市場に行って考え直すそうです。
     
     
     
     ドキュメンタリー番組制作の企画を決めるポイントは、人、動き、時代だそうですが、企画を通すためには、スポンサーが想定する視聴者層が興味を持つようなテーマを探すこともあるという、番組制作の裏側の話を聞くこともできました。
     
     甲南大学に来ていなかったらテレビドキュメンタリーのディレクターになっていなかったという松本さん。「大学生の間にした方がいいことは?」という質問に対する答えは、「いっぱい失敗した方がいい。ネットワークを作ってください」でした。
     
     
     ※2017年度にも、1年生配当「社会調査基礎演習Ⅰ」の授業で社会学科の卒業生(神戸新聞社勤務)にお話を伺い、甲南Ch.の記事として投稿しています⇒先輩の「甲南社学ストーリー」から学ぶ――文学部社会学科1年生配当「社会調査基礎演習Ⅰ」の紹介>>>(2017年6月19日掲載)
     
    (文学部社会学科教授 松川恭子)