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    甲南大学×東京海上日動火災保険(株)×神戸市「『ぼうさい授業』~災害時に落ち着いて判断・行動できるようになろう~」

    2023年3月30日(木) 地域連携新着情報 お知らせの一覧

     2023年3月15日(水)、神戸市立魚崎中学校二年生を対象に、東京海上日動火災保険株式会社と甲南大学による「ぼうさい授業」を実施しました。昨年度は、新型コロナウイルス感染症防止策のため魚崎中学校で対面とオンラインを使って授業を実施しましたが、本年度は魚崎中学校二年生のみなさんに甲南大学まで来ていただき、142教室で授業を実施しました。

     「ぼうさい授業」とは、東京海上日動火災保険(株)が小学生を対象として実施する、自然災害についての知識を身につけることを目的とした社会貢献活動(CSR)の取り組みの一つです。今回は、その授業の一部を甲南大生が担当し、授業を行いました。東京海上日動火災保険(株)に加えて、神戸市のご協力を得ながら、「~災害時に落ち着いて判断・行動できるようになろう~」というテーマのもと、 1.魚崎中学校オリジナルハザードマップを作る 2.避難所生活を体験する 3.マイ防災バックを作る の3つの段階に分けて、普段の備えから避難、避難所までをストーリー仕立てで学ぶこと、実際に体験してもらうことで、中学生が防災を自分事として考えられるような体験型学習ができるよう工夫しました。



     授業を企画するにあたって、ぼうさいの知識を中学生に教えるために私たちが事前に災害や防災について知る・知識を深めることが必要です。そのため、まずは東京海上日動火災保険(株)の担当者の方から授業の概要、神戸市の担当者の方からは阪神・淡路大震災からの教訓を踏まえた自助・共助・公助の備え、地域防災計画、災害の被害を最小限に抑える減災について教えていただきました。また、プロジェクトメンバーで魚崎地区のフィールドワークを行ったり、11月13日に甲南大学岡本キャンパスがある地域で行われた防災訓練(本山第二小学校防災福祉コミュニティ・防災訓練)に参加し、AED及び心臓マッサージ、簡易担架の作り方など普段体験できないことを経験しました。また、魚崎町防災福祉コミュニティの資料を参考にしながら魚崎町の防災教育について知識を得ました。

     授業企画の中間報告では、オンライン上で、東京海上日動火災保険(株)と神戸市の担当者の方に、授業目的・学習目標などの方針をプレゼンテーションしました。そこで得たアドバイスや新たな情報をもとに、中学生に「ぼうさい授業」で何を学んでほしいかをメンバーと相談しながら、授業構成を考えました。そして、試行錯誤を重ねて「魚崎中学校オリジナル版ハザードマップを作る」「避難所での生活を体験」「自分だけの防災バックを作る」の3部構成で体験型学習を取り入れる授業を考案しました。

     ぼうさい授業の最初のパートでは「魚崎中学校オリジナル版ハザードマップを作る」ワークをしました。ワークの一つ目はハザードマップの役割・見方を説明したあと、魚崎町の危険箇所を中学生と大学生がお互いに確認しました。このワークの目的は、地震が発生して避難する際にあらかじめ危険な箇所を知っておくことで、スムーズ且つ適切な行動ができるようにするためです。
    ワークの二つ目では近年発生すると言われている南海トラフ地震が発生したと想定し、歩道橋が壊れて渡れないなどの状況設定6つを班ごとに設けました。その後、グループワークで出た意見を大学生が選んだ代表の班に発表してもらいました。設定された状況に応じて避難経路が変わるので、状況に応じて避難経路の選択肢を考えておくことの重要性を知ってほしいと考えました。また、班の代表者に前で発表してもらうことで生徒自身が思いつかなかった避難経路を知るきっかけづくり、より多くの避難経路を持つことが大切であることを知ってもらいたいと考えました。魚崎地域に住む生徒ならではの柔軟な発想がたくさん見受けられ、非常に有意義な時間となったと思います。

     次のパートでは、神戸市で実際に使用するパーテーションと簡易ベッドをお借りして、朝・昼・夜の状況を話し声などの音源を再生して中学生の代表者に体験してもらう「避難所生活の体験」ワークをしました。パーテーションや簡易ベッドは、日常生活を送るうえで体験することができないものなので、パーテーションの中で避難所生活を送ることが快適を体感してほしいと考えました。二つ目のワークでは、高齢者や障害者の方など要配慮者が困っていると仮定して中学生ができることを班で考えてもらいました。このワークを通じて、避難所で配慮が必要な人への思いやりある行動を考えてもらうことを目的にしました。大学生とは違った目線で意見が出てきて、私たち学生も要配慮者について考えることが出来ました。

     最後のパートでは、これまでの避難・避難所ワークを踏まえてライフラインが寸断され物資が届かなくても自分の必要なものを準備しておくことの大切さを学ぶ「防災バック」のワークをしました。東京海上日動火災保険(株)からお借りした避難所で最低3日間生活できるモノが入った防災バックを実際に見てもらい、防災バックの中に入っている防災グッズをどのような場面で使うのかを最初に考えてもらいました。そこから自分に必要なものを考えてもらうことで災害への備えを前もってすることの重要性を知ってもらおうと考えました。後半では、防災の豆知識クイズを実施しました。前半に説明したことを反復学習の形でクイズにすることで、学んだ知識を覚えてもらいたいと考えました。人それぞれ必要なものに違いがあることを中学生・大学生共に学ぶことができ、考える良いきっかけになったと思います。




     授業の終了後は大学生が魚崎中学校2年生のために、独自に作成したオリジナルハンドブックを配布しました。個人証明カードや災害用伝言ダイヤルなどを記載しています。災害時は、インターネットが使えなくなることを考慮して折りたたんで持ち歩きサイズにすることでいつでも・どこでも確認できるよう工夫しました。



     今回のぼうさい授業を通して、防災の知識を習得することの大切さだけでなく、生徒に授業をすることの難しさを実感する良い機会になったと思います。これまでの学生生活で地震・津波など防災知識を習得する機会はありました。けれども、習得した知識から生徒に授業をすることは初めての経験でした。どういう目的をもって・何を学んでほしいかを考えながら授業構成を練る、聞き手の注目を引き付ける話し方・時間配分を考えるなど、誰かに授業をすることがどれだけ大変なものであるのかを実感することができました。今回の「ぼうさい授業」に参加している学生は教職課程を履修しているので、今回の授業を通して良い経験をすることができたと考えています。

     この「ぼうさい授業」の成功には、多くの方々のご協力がありました。東京海上日動火災保険(株)や神戸市、東灘区まちづくり課の方々には、防災バックやパーテーションなどの多くの事前準備やアドバイスなどたくさんご協力をしていただきました。神戸市立魚崎中学校の先生方には、授業をするにあたっての注意点や資料作成のアドバイスなどをしていただきました。また、甲南大学地域連携センターの方々には授業を成功させるために必要な様々なサポートをしてくださいました。このような多くの方々のご協力があってこそ、今回の「ぼうさい授業」が成功できたと考えており大変感謝しています。
     この授業を通して中学生のみなさんの防災意識を少しでも高めることができていれば幸いです。

    文責:経済学部1年 福井颯斗



    【「ぼうさい授業」2022年度メンバー】
    平谷 悠(理工学部生物学科2年)
    大山 まち(文学部社会学科1年)
    大野 総一郎(法学部1年)
    竹内 遥(経済学部1年)
    福井 颯斗(経済学部1年)
    ほか一名
    指導教員:全学共通教育センター 教授 久保 はるか