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    甲南メディケミカル拠点

    2020年10月23日(金) フロンティアサイエンス学部新着情報

     フロンティアサイエンス学部(FIRST)は2009年に神戸医療産業都市※注1に設置され、開設以来、化学と生物学を総合的に修得した人材の育成と、化学と生物学の融合分野の基礎研究、さらには、医療、創薬、環境、食品など諸分野への応用展開研究に取り組んできました。
     近年、FIRSTは『甲南メディケミカル拠点』構想を打ち出し、FIRSTが得意とする「化学をベースとするバイオ関連モノづくり研究」を生かして、“医師にも患者さんにもやさしい”次世代の医療に貢献する人材の育成と基盤技術を創出するべく、神戸医療産業都市内外の企業や研究機関との共同研究を積極的に始めました。

     現在、FIRSTには独立した14の研究室があり、その多くが医療関連の企業や研究機関と共同研究を実施しています。例えば、筆者(長濱)が主宰する生命高分子科学研究室では、高分子化学をベースとして生体にやさしいゲル材料を開発し、生体に細胞を移植する技術や、損傷した生体組織を修復する技術の創出に取り組んでいます。また、これらゲル材料を再生医療に応用することを目指し、臨床医や基礎研究医との共同研究を進めています。その一例として、先日は、東京の開業医との共同研究プロジェクト「リンパ浮腫※注2に対する新しい治療法としてのリンパ管新生・再生技術の開発」において、実験動物を用いたリンパ管再生実験を行いました。結果はまたの機会にご紹介できればと思います。

     FIRSTのカリキュラムで医学そのものは学びませんが、医学の基礎となる科目を学んだり、医学や医療に関わる研究を行うことはできます。このような研究は、“化学や生物学を神戸医療産業都市で学べるFIRST”だからこそ実施できることであり、FIRSTの強みのひとつです。


    FIRST 7階から見た神戸医療産業都市と六甲山系


    ※注1 神戸医療産業都市とは
    神戸医療産業都市が始まったきっかけは、1995年に神戸を襲った阪神・淡路大震災です。震災で大変な被害をうけた神戸を元気にするために、神戸の経済を立て直して、「未来のいのち」を守る場所をつくるために、神戸医療産業都市の街づくりが始まりました。現在、神戸医療産業都市は日本を代表する医療産業都市に成長し、医療に関係する企業や大学・病院、研究所が約370集まっており、11,000人を超える人たちが働いています。

     2020年10月31日には、毎年恒例の神戸医療産業都市一般公開が開催されます。一般公開は、科学と医療の最先端現場を大公開し、市民に知っていただく一大イベントで、毎年延べ10,000人以上が訪れます。見学ツアーや実験体験など、実際に見て、触れて、学べることがこのイベントの特徴ですが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインで開催されます。FIRSTからは、皮膚や腸などに含まれる細胞や組織について遊びながら学べるジグソーパズルアプリを出展します。このアプリはスマートフォンやパソコンから簡単に操作できますので、是非遊んでみてください。
    神戸医療産業都市 一般公開 on the WEBホームページ


    ※注2 リンパ浮腫とは
    リンパ浮腫とは、様々な原因により、リンパ液の流れが滞り、手足などにむくみが生じる疾患です。主な原因として、がんの外科手術を行う際、がんの転移を防ぐ目的で、がん組織に加えてがん周辺のリンパ節も同時に摘出することがあります。これにより、リンパ液がうまく回収されず、手足などにひどいむくみが生じます。

    (文責 フロンティアサイエンス学部准教授 長濱宏治)