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    台湾研修報告・その5

    2018年10月01日(月) 法学部新着情報
    えん罪救済ボランティアの台湾研修報告、その5です!法学部3回生の岡脇聡美さんの記事です。
    [法学部教授・笹倉香奈]
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    台湾研修の最終日は、朝8時半からシンポジウムが始まりました。そして、午後6時にTIP(台湾イノセンスプロジェクト)の理事長の挨拶で終了しました。
    スケジュールは、以下のようなものでした。
    まずは、「非常阿英」という冤罪被害者を追った台湾のドキュメンタリー映画の放映があり、その後桜井昌司さん(布川事件の冤罪被害者)を含めた台湾の冤罪被害者の方々のパネルディスカッションが行われました。その後は、専門家による講演が主な内容となりました。謝志宏さん(冤罪で死刑が確定し、再審請求中)の事件の証拠の分析がなされました。また、弁護士・検察官・大学教授による被害者のPTSD(※)についてのパネルディスカッション 、最後に弁護士・裁判官・大学教授による刑事補償制度についてのパネルディスカッションがありました。どのお話も専門的で難しい部分が多かったものの、とても興味深い内容でした。
     
     ※ PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)は、強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、こころのダメージとなって、時間がたってからも、その経験に対して強い恐怖を感じるものです。震災などの自然災害、火事、事故、暴力や犯罪被害などが原因になるといわれています。(厚生労働省サイトより>>>

    特に印象に残っているお話が3つあります。
    第一に、冤罪被害者の方々のお話です。冤罪被害者の皆さんは、「周りの人に支えられた」と口々におっしゃられていました。冤罪で獄中に入れられた彼らにとって、唯一の心の拠り所は、身近に支援してくれる方々でした。その方たちのおかげで、苦しい獄中生活も裁判での戦いも乗り越えられたのだそうです。支えとなっていた人は、家族ボランティアの人たち・弁護士など様々だったそうです。しかし、「誰か一人でも自分自身を信じてくれている」という心の支えが、とても彼らの中で大きかったのだと私は感じました。ちなみに桜井さんは、国民救援会という団体に支援され、人の善意に支えられる喜びを知ったそうです。桜井さんは、獄中でお父さんとお母さんを亡くされています。そのときに桜井さんが書いた詩があります。すごく心に残った「孤独を知るとき」という詩です。
     
    人は苦しみによって孤独を知るのだろうか
    悲しみの深さが孤独を教えるのだろうか
    僕は、喜びのとき幸せな思いのとき
    一人きりの喜びと幸せのそのむなしさに孤独を知った
                  ――桜井昌司「孤独を知るとき」――
     
    桜井さんは、本当につらかったのは楽しい時や嬉しい時だとおっしゃっていました。一番伝えたいことがあるとき、共感してほしいことがあるときに、親がいないつらさや悲しみを感じたそうです。この感情は、体験した本人しかわからないとてつもない辛さだろうと思いました。

    第二に印象に残っているのは、検察官や裁判官が冤罪等の法に関する問題に向き合うシンポジウムに参加していたことです。これには本当に衝撃を受けました。なぜなら、日本では裁判官や検察官が率直に自分の意見を述べる機会は少ないように思うからです。この違いはいったいなぜなのでしょうか。
    台湾イノセンスプロジェクトの弁護士の方に尋ねたところ、「冤罪・PTSD・刑事補償制度などはすべて司法を担う人々全体の問題です。ですので、一致団結してこの問題を解決していくという気持ちをみんな持っているので、裁判官や検察官が参加するということは特別なことではありません。」とおっしゃっておられました。このような状態を当たり前だと感じているようでした。法曹三者が一体となって問題解決をしようとする姿に感動しました。日本においても、このような意識を三者が持つと、より冤罪問題等の解決が早くなるのではないかと思いました。なぜなら、日本において冤罪等の問題が無くならないのは、法曹三者全員の問題だと各々が感じていないところに問題がある、と私は思うからです。

    最後は、台湾イノセンスプロジェクトの理事長のお言葉です。「最終的な目標は、司法を改革することです。とても大きい目標ですが、冤罪のない世の中を目指すことはできます。具体的には、今回アジアでネットワークを作って情報交換をしたように、世界規模で情報交換し力を合わせることで目標を達成できます。」とおっしゃっていました。地道なことですが大切なことだと思いました。
    鄭性澤さんという台湾の冤罪被害者の方は「強い意思があれば希望がみえる」と言います。
    冤罪という大きな壁は、みんなで一致団結して乗り越える必要があると感じました。
    この台湾研修で台湾・シンガポールの学生とも交流できたのはすごく良かったです。今後も彼らとの交流を増やして、少しでも学生が行えること共有して増やしていけたらいいなと感じています。鄭さん(台湾の冤罪被害者の方)のように、強い意思を持って、今行っていることは必ず誰かの役に立っていることを信じて、今後もえん罪救済学生ボランティア活動を続けていきたいと思います。
     
     
     
     
     
    ↑桜井昌司 さん(布川事件の冤罪被害者)を含めた台湾の冤罪被害者の方々のパネルディスカッション中の写真です。
     
     
      
    ↑左から、弁護士・検察官・大学教授による被害者のPTSDについてのパネルディスカッション 、最後に弁護士・裁判官・大学教授による刑事補償制度についてのパネルディスカッション中の写真です。
     
    ↑鄭性澤さんという台湾の冤罪被害者の方の、「強い意思があれば希望がみえる」という名言Tシャツの写真です。
     
    ↑台湾の学生ボランティアたちとの交流時の写真です。