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    冤罪被害者の桜井さんにお話をうかがいました!

    2018年8月30日(木) 法学部新着情報
     連載「えん罪救済ボランティア・東京研修」第1弾です。法学部3回生の大谷奈緒さんの記事です。                          
    [法学部教授・笹倉香奈]
     
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    研修一日目の2018年8月21日、甲南大学ネットワークキャンパス東京にて、布川事件の冤罪被害者、桜井昌司さんからお話を伺いました。
     
        布川事件とは、1967年8月に茨城県利根町布川で大工が殺害された強盗殺人事件です。桜井昌司さん(当時20歳)は事件の犯人とされました。桜井さんは10月に別件逮捕され、そこから本件布川事件の取調べを受け、自白に陥りました。そしてこの虚偽の自白によって有罪の認定を受け、1978年の最高裁判所の判決で無期懲役が維持され服役されました。刑務所からの仮出所後、一回目の再審請求は棄却されましたが、2001年に第二次再審請求をして2009年に再審が確定し、それにより2011年に無罪となりました。
     
     桜井さんは、なぜ冤罪は作られるのか、冤罪防止に必要なことは何かということなどを自分自身の経験に沿って話をしてくださいました。

     
     なぜ冤罪は作られてしまうのでしょうか。桜井さんは、最大の原因は虚偽の自白であると指摘されました。捜査機関は「自白」を盲信します。「無実の人は、やってないことをやったとは言わないだろう」と考える傾向にあります。さらに、裁判官は科学的な証拠よりも「自白」を信じるので虚偽の自白が生まれ、それが証拠として使われてしまうのです。
     
    「なぜ、やってもいない犯罪についてやりましたと自白するのだろう」と思う人も多いと思います。しかし、桜井さんは無実の人でも簡単に自白してしまうのだと仰っていました。その罪を犯していない人にとって、取調べは衝撃的であり、不安や恐怖といった感情が増大します。その上何日も続くとなったら、その苦痛から脱するために、虚偽の自白をしまうのです。なぜなら、その後の公判廷で検察官や裁判官に真実を言えば信じてもらえるはずだと思っているからです。しかし、実際はそのようなことはなく、一度自白したら否認をしても認められません。その為、取調べで自白をしてしまうと、無実の場合でも誰もが犯人に仕立て上げられてしまうのです。
     
    また他にも冤罪事件が作られてしまう過程において、真犯人を示すような明確な証拠を検察が隠し持っていたり、警察によって証拠が捏造されたりすることも大きな問題だと説明してくださいました。
     
     桜井さんは、冤罪防止には取調べの全面可視化や、全面証拠開示が必要であると仰っていました。そうすべきだと私も思いました。2016年の刑事訴訟法の改正で、裁判員裁判対象事件や検察の独自捜査事件など、全事件のうち2〜3%は取調べの可視化が義務付けられるようになりました。(2019年に施行されます)。それ以外も検察が必要だと考えている事件では行っているそうですが、可視化の範囲を検察官の裁量で決めるのでは無く、法律で義務付けることが必要だと思いました。
     
    冤罪を通してして桜井さんは「この経験は無駄では無かった」と語りました。私はこの言葉が印象に残りました。このような辛い経験を前向きに考えることに感銘を受けました。そして、困難な経験こそが人の才能を磨く力であると仰っており、強く心を打たれました。
     
    桜井さんのお話を聞いて、冤罪が生まれないような法律を作るべきであると感じました。2016年の刑事訴訟法の改正で多少は改善されたと思いますが、不十分な点はまだあると思います。桜井さんも仰っておられましたが、証拠開示や取調べの全面的な可視化です。立法するのは簡単なことではないと思いますが、少しでも私たちが声を上げ社会に働きかけることで改善したらいいなと思いました。その為にも刑事司法制度について勉強し、冤罪という問題を多角的な視点から見れるようになりたいと思いました。
     
    桜井さん、大変貴重なお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました。