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    浪速少年院を参観しました

    2018年8月06日(月) 法学部新着情報
     期末試験が終わってホッとした夏休み初日、大阪府茨木市にある浪速少年院を「えん罪救済ボランティア」の皆さんと参観しました。
     
    少年院とは「家庭裁判所の決定により保護処分として送致された少年を収容する、法務省所管の施設です。少年院では、在院者の特性に応じた適切な矯正教育その他の健全な育成に資する処遇を行うことにより、改善更生と円滑な社会復帰を図っています。」(法務省「少年院のしおり」(>>>)より)。おおむね12歳から20歳の少年が入っています。刑罰を執行する刑務所とは異なり、少年院では少年の特性に応じた教育や育成をすることを目的としています。
     
     浪速少年院は日本最初の2つの少年院のうちのひとつで、1923年に設立されました。「第一種少年院」として、主として近畿地方の家庭裁判所で少年院送致の決定を受けた少年を対象にしています。
     現在、全国的に少年による犯罪や非行は減少の一途をたどっています。浪速少年院でも現在の入院者は約70名で、定員の約半分程度だそうです。15歳から20歳の少年が在院中です。
     
     少年たちの4割以上が、窃盗で送致をされたとのこと。特殊詐欺の「受け子」などによって送致された少年が増加傾向だそうです。学歴は高校中退の生徒も多いようですが、希望者は高卒認定試験を院内で受けることもでき、これまでに20名弱が受かっているとのことでした。
     
     また、社会復帰のためには就労支援も重要であることから、ハローワークからの協力を得たり「職親プロジェクト」という一般企業による社会復帰支援の試みによって就職する生徒もいたりするようでした。
     法務教官の先生に浪速少年院の現状について伺ったあと、院内を見せていただきました。その後は参加者からの質疑が行われました。
     
     「生徒間のトラブルはないのか、どうするのか」という質問へのお答えがとても印象的でした。少年院はベースが集団教育であり、多少のいざこざやトラブルがあった方が教育としてむしろ重要である、気が合わない人とどう付き合うかということを学ぶ契機になる、というのです。このような時は当事者同士に良く話し合いをさせ(「調整」というのだそうです)、自分たちで問題を解決させるとのことでした。少年院の処遇の特長がよくわかりました。
     また、刑務所に比べて少年院の再入率が低いとどこかで読んだがなぜかという質問に対しては、少年院は満期釈放のある刑務所と違い、ほぼ全員が「仮退院」になって保護観察に付されるため、手厚いフォローができることも一因ではないか、との説明がありました。
     
     現在、少年法の適用年齢を引き下げるべきか否かが議論されています。教育や社会復帰を重視する少年院の処遇現場を見たうえで、この問題をどう考えるべきか、参加者は色々と思いをめぐらしたようでした。

     
    〔参加者からの感想〕
    ・一回生・Iさんの感想
    建物がとても明るく近代的で驚きました。正面には大きな窓があり、塀も低く、ちょっとしたホテルのようでした。少年院に入っている間に様々な資格を取ることができ、合格率も非常に高いということが印象的でした。少年院はただ「更生」のためだけの施設で、道徳的なことだけをやっていると思っていましたが、学力や施設を出てからのこと、つまり将来面のサポートもあることに驚きました。実際に少年たちが生活している部屋も見られて良かったです。やはり実際に目で見て、そこで働く人々の話や、様々な人の意見を聞くことが大切だと思いました。
     
    ・一回生・Tくんの感想
    少年院に足を踏み込んでみて、肌で感じるとはこういうことなのかと、色々考えさせられました。少年院に対するイメージも一変しました。少年院と刑務所の相違、少年院での生活などについて学ぶ良い機会となり、視野を広げる契機になりました。
     
    ・三回生・Oさんの感想
    これまでも刑務所や拘置所参観に行きましたが、少年院も同じようなものかと思っていました。しかし、かなり違うのだということを参観によって知ることができました。
     刑務所は1000人を超える規模の施設もありますが、少年院は100人程度の規模にしているのは、少年の教育を行き届くようにするためかと思いました。検察官送致された事件は裁判員裁判対象事件ですから、私たち一般市民が裁判員となり少年を裁くことがあるかもしれません。少年はコミュニケーション能力がまだ不十分であり、検察官や裁判官に迎合しやすい傾向にあると思います。だからこそ、裁判員は少年と向き合うべきだと思いますし、このようなことを社会に周知すべきと思いました。
     
    ・三回生・Gさんの感想
    少年院の職員の方々は「更生の可能性」を強く信じているように思いました。なぜかというと、職員の方が「院内で多少のいざこざが起これば、少年らは苦手な人との付き合い方を学ぶことができるから悪いことではないとおっしゃっていたからです。少年院では少年らの成長を促すため柔軟な姿勢がうかがえました。刑務所よりも少年院の方が再入率が少ないとうかがいましたが、このような柔軟な姿勢が少年らの社会復帰を促しているのではないでしょうか。犯罪行為に走った人には、刑罰よりも教育が必要だということを裏付けているようにも思いました。
     
    〔法学部・教授 笹倉香奈〕