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    甲南映画祭 ’25 学生スタッフによる作品紹介・教員インタビュー(7)

    2025年11月19日(水) 文学部新着情報 お知らせの一覧

    学生スタッフによる甲南映画祭の見どころ紹介7回目。今回は、12月2日(火)に上映する井上剛監督の『その街のこども』(2011年)について、文学部英語英米文学科の大岡美月さんが、秋元孝文教授にインタビューをしました。


    『その街のこども』 ©2010NHK


    Q.なぜこの映画を選びましたか?
    テーマが「災い」であり、阪神・淡路大震災から30年経った今、当時生きていた者と、知らない者の目線の違いを改めて知りたいと思ったからです。記憶を継承することだけではなく、語り継がれるそれを実際に体験をしていない人たちがどう感じているのかを知りたいし、同じように自分はどう感じているんだろう、と考えて欲しいと思って選びました。

    Q.作品のどこを見て欲しいですか?
    主人公二人がどのように震災向き合っているか、またその違いです。震災を経験した第一世代を中心に描く作品が多い中、この作品は震災当時にまだ幼かった子供の15年後が取り扱われています。一人は過去に向き合おうとし、一人は向き合わないことを選ぶ、その理由とか。なぜ街を離れていた人をキャラクターに選んだのか、とか、たくさん考えて欲しいことはあります。

    Q.注目して欲しいポイントはどこですか?
    この映画では、主人公たちが一貫して神戸の街を歩いています。手持ちカメラでの撮影ということもあり、ドキュメンタリのような近さで撮影をしている。この方法を用いた意図や、これで何を描きたいのかなどを考えながら画面の構成を注目してみて欲しいです。ストーリーはもちろん、どうしてこの作品を作ったのか、構図、いろんなところに注目して欲しいです。

    Q.メッセージはありますか?
    作品自体はそこにありますが、そこに何を読み取るか、そこにどのような意味を見出すかは鑑賞者次第です。ここではあなたが感じたことを自由に受け取ってください。
    何かを見るときに、鑑賞する人の生きてきた長さ、つまり、年齢の物差し、というものが大切になります。私たちは生きている分の体験しか知り得ません。新しい世代が経験していないものをわからないと言うのは当たり前ですし、語り継ぐこと自体難しいのも当たり前です。無理に理解しようとしなくて構いません。体験し得ない物差しの外側、想像の外側にあるものをどう感じるのか、それを大切にして鑑賞してみてください。

    インタビュアーのコメント
    過去を「語り継ぐ」や、「忘れない」という視点は、時折、私たち受け継ぐ側の“自分達は体験していないのに”という矛盾を刺激します。一方で、今回の主役は鑑賞者私たちの対話であるということに、少し胸を撫で下ろす方がいらっしゃるのではないでしょうか。私たち側の意見も、正しく「意見」です。近しい目線で描かれた映画、またその後の対話がどうなるのか、すごく楽しみです。興味がある方、時間がある方、んなもん体験しとらんのじゃ知るかい、と少し反抗的な方もぜひ、足を運んでみて欲しいです。あなたの言葉を聞かせてください。



    『その街のこども』の上映時間、および映画祭全体のスケジュールは、
    甲南映画祭公式ウェブサイト(https://www.konan-u.ac.jp/konan-film-festival/)をご覧ください。

    (文学部教授 中町信孝)