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    井野瀬久美恵先生 最終講義の開催

    2024年7月30日(火) 文学部新着情報 お知らせの一覧

     2024年7月17日(水)、2時間目に1-42教室において本学文学部英語英米文学科教授の井野瀬久美恵先生による最終講義が催されました。井野瀬先生は1991年より33年にわたり本学で教育・研究に邁進してこられました。このたび9月より新しい組織でご活躍されるために8月31日をもって本学をご退職されることとなりました。当日は卒業生や大学関係者、そして英語英米文学科の1・2回生の学生ら、総勢300人ちかくが集い、教室内は活況を呈しました。



     井野瀬先生はイギリス史の、とくに大英帝国史をご専門とされ、これまでに『女たちの大英帝国』(講談社現代新書、1998)、『植民地経験のゆくえ』(人文書院、2004)、『大英帝国という経験』(講談社学術文庫、2017)などの優れた研究成果を世に出されてきました。最終講義では「「帝国」だったイギリスの「過去」と対話する」と題し、大英帝国という経験が現代のイギリスや世界においてどのような意味をもつのかについてお話しくださいました。



     はじめに、これまでの研究成果の紹介を通して、ご自身の関心の射程について説明され、その後、現代のイギリスや旧植民地圏において話題となっている、コルストン像やセシル・ローズ像の問題などについて触れながら、最後に退職後もひきつづき研究を継続していく意気込みを語られました。



     井野瀬先生の最終講義で印象的であったのは、大英帝国時代の歴史学をご専門とする先生のお話しが、いずれも21世紀以後の西暦がならぶ現代の問題を中心に展開されていた点でした。さらに、2024年6月に日本で話題となった人気アーティストのPV問題に触れるなど最新の話題が盛り込まれたり、講義で使われた資料もその多くが井野瀬先生が実際に現地におもむいてご自身の足で集められた情報であったりと、授業にさまざまな工夫が凝らされていた点も印象的でした。



     井野瀬先生の最終講義は、井野瀬先生が本学で33年間の長きにわたり、つねに新しい世界の状況に目を向けて研究活動を行い、そして最新の研究成果を学生たちに提供してきたという、自負と誇りが伝わってくる内容でした。そして、大学の研究者としてあるべき理想像を常に追い求めてこられた、井野瀬先生の誠実なお人柄が伝わってくる最終講義でもありました。歴史学の深みと、研究者としての高みを感じさせてくれる、甲南大学の歴史に残る素晴らしい最終講義となりました。

    (英語英米文学科准教授・浜本隆三)