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    瀬戸内海の離島で学ぶ環境問題と地域再生:社会学科 帯谷ゼミ

    2024年4月24日(水) 文学部新着情報 お知らせの一覧

    個性豊かなゼミが揃う社会学科の中で、帯谷ゼミでは「地域と環境のサステナビリティ」をテーマに掲げ、ゼミ生がグループリサーチや個別研究に取り組んでいます。帯谷ゼミの定例行事の一つに、テーマを決めてフィールドを訪れる「ゼミ合宿」があります。教員と相談をしながら、ゼミ生が時間をかけて行き先や予定を決めるのが特徴で、2024年3月のゼミ合宿では、2回生14人全員が参加し、香川県の豊島(てしま)を訪れました。

    瀬戸内海に浮かぶ離島の一つである豊島(小豆郡土庄町)は、20世紀後半に、日本国内で最大・最悪と言われた産業廃棄物不法投棄問題に直面してきました。島には住民が主体となって、これを黙認・放置してきた国や香川県と闘ってきた長い歴史があります。一方で、産廃の撤去事業が始まった今世紀には、近隣の直島などと並んで、豊島は現代アートによる地域づくりによって注目されており、海外からも多数の観光客が訪れる場所になっています。




    ゼミ合宿では、長年、産廃問題に従事し住民運動に関わってこられたキーパーソンである石井亨さん(現土庄町議)に、広大な産廃の不法投棄現場と資料館を案内していただき、問題の経緯や現在の課題についてお話をお聞きしました。撤去事業が終了した現在、かつてマスメディアを賑わせた豊島の産廃問題が人びとの記憶から薄れていっている一方で、大規模に汚染された現場の土壌や地下水からは依然として有害な成分が検出されており、今後もモニタリングをしていく必要があることなど、問題解決にはまだまだ時間がかかることを実感しました。




    その後、島の東部にある豊島美術館を全員で訪れ、島に流れるゆったりとした時間とともに、モダンな現代アートが人びとを惹きつける力を体感しました。その一方で、産廃問題はもとより、公共交通の貧弱さなど過疎問題に直面する住民の日常生活とのギャップも感じられ、豊島の現状から現代社会の多様な課題を学ぶ機会となりました。ゼミ合宿で得られた知見や経験は今後のゼミ活動に活かしていくことになります。

    (文学部社会学科教授 帯谷博明)