新着情報
ムスリム・フレンドリーへの取り組み(歴史文化学科)
2024年2月24日(土) 文学部新着情報 お知らせの一覧 近年、日本を訪れる外国人観光客の中に、インドネシアやマレーシアといったムスリム(イスラーム教徒)諸国の人々が増えています。彼らはせっかく観光に来た日本で、礼拝を行える場所が見つからなかったり、ムスリム向けの食事が取れる場所が分からなかったりして、不便な思いをすることがあるそうです。
そんなムスリム観光客のニーズに応えるために、神戸・大阪のモスク(礼拝所)やハラール料理(ムスリム向けに認められた食品のこと。豚やお酒が入っていないなどの決まりがある)のレストランの情報をまとめたガイドブックを作ると良いのではないか? そう考えた学生たちが「ムスリム・フレンドリー甲南」というプロジェクトを立ち上げました。日頃ゼミや授業で学んでいるイスラーム文化の知識と、自分たちの身近な問題とを結びつけて考える絶好の機会でもあります。
まずは具体的なニーズを把握するために、阪神地域のモスクを訪ねて聞き取り調査をしました。関西のモスクといえば、日本最古の神戸モスクが有名ですが、その他にも最近は神戸の春日野道、大阪の西淀川、西成などにも大きなモスクができており、それぞれ特色ある活動を展開していることが分かりました。
また、モスクに集うムスリムは基本的に長期滞在者が多いので、観光客としてのムスリムのニーズを調べるために、神戸と大阪の観光局を訪れて話を聞きました。それから実際のハラール・レストランを訪ね、ムスリム客向けにどんな料理を出しているか、どのようなことに気を配っているかを詳しく尋ねました。
集めた情報を元に、いよいよガイドブックの作成に取り掛かりますが、1つ問題が生じました。ハラール食品のとらえ方は、実際には人それぞれであるということが分かったのです。豚肉さえ入ってなければ何でも構わないという人も居れば、豚肉を調理する器具では他の食材を調理しないでほしい、もっと厳密なハラールのきまりを遵守してほしいなど、様々な意見がありました。そこで学生たちは議論を重ね、最終的に、各レストランの特徴を示すアイコンを作って、選択肢を示すことにしたのです。
こうして『阪神ムスリムハラールマップ』が完成しました。調査旅費や印刷費には、本学の地域連携センターが管轄する「地域とつながる活動助成金」の支援を受けることができました。マップの発行部数はまだ初版ということで少ないですが、これからはさらに内容を充実させて版を重ねていく予定です。いっしょにハラールマップを作ってみたいという人がいましたら、是非とも参加して下さい。
(文学部歴史文化学科教授 中町信孝)