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谷崎の秘密は解けたか? ぶんたすプロジェクト報告―文学部のいま(その5)―
2015年12月22日(火) 文学部新着情報
12月11日(金)に文学部ぶんたすプロジェクト(プレミア・プロジェクトのスマート・ラーニング部門に参加)の一環として、融合型公開ゼミ「谷崎潤一郎の「秘密」」が開催されました。約80名の参加を得て、盛況のうちに終えることができました。
まず、演劇部の高見さんのこなれた朗読で、短編小説「秘密」を耳から共有しました。そのあと、運営にあたった文学部日本語日本文学科の学生から4つの視点からゲスト講師の日高佳紀先生に質問を投げかけました。たとえば、探偵小説としての性格付けについて、1910年代では、現在使われている意味より広い意味で「探偵小説」が考えられていたという講師よりの回答がありました。
日高先生の報告では、都市小説として「秘密」をとらえるという提言がなされました。会場から質問があり、異性装趣味とトランスジェンダーの複雑なからみが解きほぐされたり、陰を失いつつある現在の都市との比較について提言がなされたり、議論の輪が広がりました。
感想シートには、文学研究の読解のあり方が社会構成や時代状況から経済の問題にもつながるという経済学部の4年生の参加者の指摘があり、異なる学部や学科に所属する人たちの意見の交流そのものが新鮮であったという感想も見出すことができました。
今回の公開ゼミの企画には、もともと学科や学部の枠を超えるというモチーフがあり、それがある程度実現したのはたいへんうれしいことです。
運営は日本語日本文学科の3年生が担当しました。日高先生の切り返しにたじたじとなったり、緊張して質問が行方不明になりかけたり、いろいろ心もとないところもありましたが、公開ゼミを企画して、多くの方々に参加していただいたプロセスそのものが貴重な経験であったと思います。
最後に、運営担当の学生たちの感想を紹介しておきます。
「とても緊張しましたが、良い経験になりました。」(堀さん)
「ゼミの仲間と一つの課題に取り組み追究することの難しさを痛感し、そしてそれ以上の達成感を得ることができました。」(小久保君)
「『秘密』をより深く読み、考える素敵な場に、参加することができてとても光栄でした。」(葛城さん)
「発表の際、経済学部の教授から意見をいただくことができ、自身の見聞が広まりました。これを機会に、さらに他学科・他学部との交流を深められたらと思います。」(田山君)
(文責:文学部日本語日本文学科教授 木股知史)