「ゼミって何をするの？」という疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。ミディアムサイズの甲南大学では、“顔のわかる”少人数教育を実施しており、その中心にゼミナール（通称「ゼミ」）があります。文学部社会学科では、各教員に対して10人前後の学生が学んでおり、関ゼミでは「マイノリティ（社会的少数者）の人権問題について考える」をテーマにしています。多様な人々が共に暮らす社会について考えるうえで、まずは身近な岡本キャンパスを見直してみました。どういった内容を学んでいるのか、ゼミ生さんにレポートしてもらいます！（関）

■「トイレマップ」作成で気づいたこと
私たち文学部社会学科関ゼミ３回生11名は、2回生後期よりジェンダー問題などを取り扱った本を読み、ディスカッションを重ねてきました。3回生前期の初めには、甲南大学に通うトランスジェンダー(注１)女性の方にお話を伺い、経験や悩みを聞かせていただきました。それらを踏まえ、トランスジェンダーの方が求めている情報は何かを整理し、学内の制度や設備について話し合いました。その結果、私たちは「多目的トイレ」を中心に、トイレマップを作成することにしました。

学内のトイレでのフィールドワークの様子

まずは、岡本キャンパス内の全てのトイレの現状や課題を把握するために、３つの班に分かれて全員で写真や動画の撮影をしました。また、フィールドワークを通じて出てきた疑問や質問は、学内の担当部署に確認しに行きました。ここでの主な気づきは、次の2点でした。

①入口が男女別になっている多目的トイレがある
②サニタリーボックス(注２)が設置されていない多目的トイレがある

これは、多目的トイレがトランスジェンダーの方だけではなく、Xジェンダー(注３)や生理のある人にとっても使いづらい可能性があるということです。他にも、トイレ内の段差や広さ、オストメイト(注４)対応トイレの数、おむつ交換台の有無など、普段なら気がつかなかった様々な事情を抱えた人にとっての問題点も見えてきました。
一方で、調査したすべてのトイレが清潔に保たれていたことも大きな発見でした。（毎日きれいに掃除をしてくださっている清掃員の方々、ありがとうございます！）

グループワークの様子

■誰もが使いやすい「トイレマップ」とは
次に、集めてきたデータをどのような形でアウトプットするかについて検討しました。調査の過程で得た情報を取捨選択しながら、新たに坂道やスロープの情報も入れることを決めました。結果として、1枚のマップを作成するには情報量が多すぎると判断し、改めて 5つの班（トイレマップ、バリアフリーマップ、写真整理、報告書、記事担当）に分かれ、作業をすることにしました。班の声の一部を紹介します。

（トイレ／バリアフリー）マップ班では、甲南大学を利用する人にとって分かりやすいマップを目指し、試行錯誤しました。オリジナルのピクトグラムや手描きの地図を作成し、工夫を凝らしながらマップを完成させました。

写真整理班では、調査を行った時に得た約250枚の写真とトイレの詳細情報を整理しました。情報をまとめる際に、データのばらつきを統一することに苦労しました。また、誰が見ても一目で分かりやすいものにするために、様々な意見をいただきました。それを踏まえて、当初文章でまとめていたものを表に変更しました。

トイレマップ作成を通して、改めて私たちが学んでいる岡本キャンパスを考えるきっかけになりました。私たちが作成したマップが、岡本キャンパスを利用される方に少しでも役立つことを心から願っています。

（注1）トランスジェンダー：生まれた時に割り当てられた性別とは異なる性別を生きる人。
（注2）サニタリーボックス：生理用品などを入れる小型のゴミ箱のこと。
（注3）Xジェンダー：生まれた時に割り当てられた性別に関わらず、自分の性について男女のどちらかには限定しない認識を持つ人。
（注4）オストメイト：人工肛門や人工膀胱のある人。

添付資料
1．バリアフリーマップ
2．トイレマップ
※「トイレ情報詳細」と「報告書」は、10号館7階の「社会学科共同図書室」で閲覧することができます。

(文学部社会学科3回生　関ゼミ)

バリアフリーマップ

トイレマップ