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英語英米文学科:【KONANプレミアプロジェクト】合同授業を開催しました!
2020年12月25日(金) 文学部新着情報
去る12月3日木曜日の3限に、このたび往復書簡集『私とあなたのあいだ』(明石書店)を出版された小説家の温又柔(おん・ゆうじゅう)さん、木村友祐さんをお招きし、文学部プレミアプロジェクトの一環として、英語英米文学科秋元ゼミ、井野瀬ゼミ、英米文化探訪(担当者岩井)の3科目の合同授業が行われました。
温さんと木村さんは2018年の11月に甲友会館で開催した文芸イベント『いま、この世界で、物語を語ることの意味』でのシンポジウムにご登壇いただいており、『私とあなたのあいだ』はその頃に産声をあげた企画でした。その出版のタイミングでぜひ甲南大学で授業に参加していただきたい、という約束はだいぶ前からしていたものの、新型コロナウィルスの感染拡大によってほぼ全ての授業がオンラインになった今年前期には本企画の実現も無理ではないかと思われました。
しかし後期になって対面授業が開始されたため、お二人に再度打診し、非常に前向きなお答えをいただきました。感染の拡大状況を見ながら、いつでもオンラインに切り替えられる準備もしつつ、又、感染予防のため、大きな会場で事前申し込み制にして人数も上限を決め、また、会場に来られない学生のためにオンライン同時配信の準備もしながら、無事当日を迎えることができました。
講義では教員側からの質問に答えていただく形でお二人にお話を聞き、言葉の基準や標準といった問題、「普通」なんてどこにもないのではないか、という問題や、書き言葉と話し言葉、性や国籍の違いの問題から、学術会議問題やナイキのCMの問題まで、多様な話題について、「あいだ」を探ったお二人ならではのお話を聞くことができました。終盤では事前に収集された学生からの質問にも答えていただき、最後にはお二人が書かれた本書のテーマを表したテクストの朗読までしてくださいました。
授業終了後には、温さん、木村さんと言葉を交わしたい学生やサインを求める学生が列をなし、授業では聞けなかった質問をしたり、感想を伝えたりとさらなる交流の場が生まれました。
今のこの日本の文学の場において、現実社会の歪みに最も鋭敏に反応してその違和感を表明し続ける温さんと木村さん。本物の作家たちとの交流と、そこで聞いた「普通」や「常識」を疑うことの意義はきっと学生にみなさんの胸に深く刻まれたことと思います。今すぐに何かが変わることはなくとも、この体験が気づきの種となって、将来のみなさんの土壌で芽を出せばいいなと思います。そしてこの新型コロナ・ウィルス感染症流行の中、東京からお越しくださった、温さん、木村さんの二人のゲストに感謝申し上げます。人と人が直接会って話をし、考えを深めていくことが難しくなった災厄の年、こうしてこの授業が実現できたことは、お二人のご協力あってのことでした。
文学部では一昨年の「今、この世界で、物語を語ることの意味」、昨年のエトガル・ケレットさん、シーラ・ゲフェンさん、西加奈子さんをお招きした「おもしろさの向こう側」など、作家を招いた文芸イベントを毎年開催してきました。今年はコロナ対策もあって学外にはオープンにできませんでしたが、温さん木村さんのおかげで素晴らしい授業がができました。これからもこのように文学の魅力と触れる機会が設けられるよう努力したいと思います。
(文学部英語英米文学科・秋元孝文)