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    「クジラの町」でフィールドワークを実施しました!

    2019年12月04日(水) 文学部新着情報

     『ザ・コーヴ』という映画を知っていますか?日本の小さな町で行われているクジラ漁(あるいはイルカ漁)の残酷さを暴き出して、漁をやめさせようと訴えるドキュメンタリー映画です。2009年にこの映画がアカデミー賞を受賞してから後、映画の舞台となった和歌山県太地町には世界中から反捕鯨団体が押し寄せて過激な反対運動を展開するようになりました。太地町は江戸時代から捕鯨で栄えてきた町ですが、この騒ぎによって一躍世界的に有名になりました。



     文学部人間科学科の西ゼミでは、捕鯨問題を今年度のテーマに選んで学習やディスカッションを重ねてきました。捕鯨問題を深く探っていくと、そこには実に様々な問題が絡み合っていることが見えてきます。イルカやクジラが他の動物とどう違うのか、牛や鳥の屠殺と比べてイルカやクジラの屠殺は残酷なのか、どの種に絶滅の危惧があるのかといった微妙な論点だけでなく、地域固有の食文化や、メディアおよびジャーナリズムのあり方、国による政治運動の違い、さらにナショナリズムや民族差別的感情の問題なども絡んでいて、『ザ・コーヴ』が伝えているはそのごく一部分でしかないのです。



     11月17日から18日にかけて、ゼミ生たちは太地町を実地に訪れてフィールドワークをおこない、捕鯨問題の多面性を実感することができました。町役場でのヒアリングと質疑では、水産業だけでなくあらゆる面でクジラとの関係を意識した町づくりの全体構想を知ることができました。漁師として長年働いてこられた漁業組合参事の方からは、映画撮影時の状況などについて貴重なお話をうかがうとともに、クジラ漁に対する思いを語っていただきました。町立「くじらの博物館」では伝統文化の情報も含む充実した展示を見学し、また飼育されているクジラやイルカの生態に触れました。さらに、古式捕鯨の時代に鯨を見張る場所として使用されていた燈明崎や、鯨料理を味わうことのできる施設も訪れました。
     息を飲むような自然の美しさに恵まれた太地町の空気の中で、「この街からクジラを取ったら何も残らない」と語る町民の方々の真っ直ぐな姿勢に触れたことは、非常にインパクトのある体験でした。ゼミ生の受け止め方は様々ですが、一つの問題を様々な角度から掘り下げる意義深い学びとなりました。
    (文学部人間科学科教授 西欣也)