新着情報
「メディアをつくるプロセス」が生み出すものについて考える――文学部社会学科「メディア文化論」での地域メディアとの連携の試み(その2)
2019年4月05日(金) 文学部新着情報
文学部社会学科のカリキュラムには、メディア実践系の実習を中心とした「メディアコミュニケーションと表現」の科目群があります。甲南大学周辺地域での取材・撮影、動画作品の編集、作品の上映会を行う「発展研究F」と、地域メディアと協力してラジオ番組と動画配信番組を実際に制作、放送する「メディア文化論」について、既に甲南Ch.でご紹介しました。今回は、「メディア文化論」の紹介の第2弾として、神戸市東灘区のNPO法人「ひがしなだコミュニティメディア(以下、HCM)」と連携した動画配信番組の制作・生放送の様子と、「表現としてのメディアを通してつながること」を考え、実践し続けているゲストスピーカーのアサダワタルさんのお話についてです。
「メディア文化論」の授業担当者である辻野理花先生は、HCMの立ち上げメンバーの一人です。HCMは、東灘区を中心とする地域に根差した情報をMEDIA ROCCOの番組で毎週土曜日に配信しています。主体的なメディア発信を通じて、地域の人たちのネットワークを紡ぎ出してきました(詳しくは、「『メディア実践系』授業の作り方(実践編):他者から学び、伝える方法」『甲南大學紀要.文学編』(2018)を参照)。辻野先生は、映像編集を本格的に行う「発展研究F」もご担当されています。
2018年度の「メディア文化論」でのMEDIA ROCCO特別出張番組の配信は、2019年1月10日と17日に行われました。5-23教室を臨時スタジオにし、それぞれの日に1チームが、YouTubeでのライブ配信という一発勝負の生放送に挑戦しました。ディレクター、キャスター、タイムキーパー、ビデオカメラ操作係をチームのメンバーが分担しての15分間の放送です。各チームのテーマは、「聖地として愛される弓弦羽(ゆづるは)神社」、「成人式を迎える君たちへ~成人式、振袖について~」でした。各チームからキャスター二人が出ていますが、最初は緊張気味です。ディレクターの「もっと声を大きく」という指示が紙に書いて伝えられます。タイムキーパーがホワイトボードに残り時間を書いていきます。キャスターは取材の成果をパソコン画面上に提示して説明し、自分の経験や感想を織り交ぜて番組を進行していきます。取材する中で2チームともわかりやすい番組配信ができていると感じました。
2018年度の「メディア文化論」でのMEDIA ROCCO特別出張番組の配信は、2019年1月10日と17日に行われました。5-23教室を臨時スタジオにし、それぞれの日に1チームが、YouTubeでのライブ配信という一発勝負の生放送に挑戦しました。ディレクター、キャスター、タイムキーパー、ビデオカメラ操作係をチームのメンバーが分担しての15分間の放送です。各チームのテーマは、「聖地として愛される弓弦羽(ゆづるは)神社」、「成人式を迎える君たちへ~成人式、振袖について~」でした。各チームからキャスター二人が出ていますが、最初は緊張気味です。ディレクターの「もっと声を大きく」という指示が紙に書いて伝えられます。タイムキーパーがホワイトボードに残り時間を書いていきます。キャスターは取材の成果をパソコン画面上に提示して説明し、自分の経験や感想を織り交ぜて番組を進行していきます。取材する中で2チームともわかりやすい番組配信ができていると感じました。
「聖地として愛される弓弦羽神社」(上、1月10日)、「成人式を迎える君たちへ」(下、1月17日)を放送中。
1月10日はHCMメンバーでご自身もキャスターとして活躍する大坪良二さん、17日は”文化活動家”のアサダワタルさんから各チームの放送について講評していただき、貴重なコメントをいただきました。
放送について学生同士でフィードバックを行う(1月10日)。
HCMゲストスピーカーの大坪良二さんからコメントをいただく(1月10日)。
HCMゲストスピーカーの大坪良二さんからコメントをいただく(1月10日)。
17日には講評に引き続き、アサダさんから「メディアの『その後』 メディアの『手前』―表現としてのメディアが生み出すコミュニティ―」と題したお話がありました。アサダさんがこれまでに行ってきた活動が次々に紹介されます。当時の大阪の自宅を開放し、訪れた人たちが様々な活動を通してつながっていく「住み開き」、大阪市西成区あいりん地区で想い出の映像を見ながら人々が集まって話をする「カマン!TV」、北海道斜里町立知床ウトロ学校の児童たちとの「校歌のオリジナルカラオケ映像」共同制作など、ユニークな活動の話を学生たちは真剣な眼差しで聞いていました。
アサダワタルさん
学生たちはアサダさんの話に聞き入っていました。
アサダさんが最近関わっているのは、福島県いわき市の県営復興団地下神白(しもかじろ)での地元住民参加のラジオ番組制作です。これは、高齢者が多い団地住民に、震災の日のことだけでなく、震災以前の人生のことも含め、結婚など人生の節目節目で流行していた音楽の想い出を通じて話してもらうという試みです。ラジオなのに電波の問題のため、収録された番組はCDで各戸に配布され、人と人との間につながりを作っていくという点がユニークです。
どの活動も、アサダさんが話の冒頭に述べた「『メディア』をつくる『プロセスそのもの』によって、既存の関係性や見慣れた風景を緩やかに組み替えていく」実践です。学生たちは「メディア文化論」で実際にラジオ番組の放送とYouTubeによる番組配信を経験しましたが、アサダさんの話を伺うことで、「メディア実践」が社会の中で人と人とのつながりを生み出す可能性を持つことに気づけたのではないでしょうか。
参考:アサダワタルWEBSITE>>>
※以下のリンクから学生たちが当日放送した番組を視聴することができます。
「聖地として愛される弓弦羽(ゆづるは)神社」>>>
「成人式を迎える君たちへ~成人式、振袖について~」>>>
(文学部社会学科教授 松川恭子)