成果報告会の様子（2024年11月17日撮影）

　甲南学園創立者である平生釟三郎先生の教えに「常に備えよ」があります。しかし、私たちは十分に備えられているでしょうか。阪神・淡路大震災では、甲南大学のある神戸のまちは大きな被害に見舞われ、本学も例外ではありませんでした。大手損害保険会社の2020年の調査によると、東日本大震災以降、約75％の人が「防災意識が高まっている」と回答しています。しかし、一方で自然災害の備えをたずねたところ、約3割の人が「特に何もしていない」と回答しています。残念ながら、いまだに私たちは十分に備えているとは言えない状況があります。

甲南学園創立者の平生釟三郎先生の教え「常に備えよ」
（2024年11月4日撮影）

　そこで、「関西湾岸ＳDGsチャレンジ」徳島チームでは、2024年7月より、徳島市立高等学校の高校生4名と甲南大学の大学生4名とで、徳島市にて防災活動に取り組んでいる行政やNPO、企業に、徳島市における防災対策の現状や課題を把握するためのインタビュー調査を実施しました。徳島市では大規模な防災訓練が毎年実施されていますが、参加者が固定化する傾向があったり、運営メンバーの高齢化が否めず、より広い参加が求められていることが分かりました。さらに、母親の視点を強みとする「ママ防災士会」では、子育ての常備品であるマザーズバックや、個人の連絡先やアレルギーなどが記されているパーソナルカードをもっていることが提唱されています。また、移動販売サービスを提供する株式会社とくし丸では、平時の対面の販売活動が結果的に見守り活動につながっている例を学びました。いずれも、平時の取り組みが、緊急時にも役立つという「フェーズフリー」の概念の有効性を実感する内容でした。
　「フェーズフリー」とは、平時と非常時のフェーズから自由（フリー）になり、「いつも」を豊かにするものが「もしも」においても暮らしと命を支えるようにデザインするという考え方をいいます。「常に備える」ことが難しい現状に対して、「フェーズフリー」という概念を生かした対策を検討しました。
　2024年11月17日に開催されました成果報告会「チャレンジアカデミー」では、大学生と高校生の混成チームにて、「フェーズフリー」に基づいた３つの取り組みを徳島市に提案しました。ひとつはAR（拡張現実）の技術を生かして疑似的な災害状況のなかで、フェーズフリー商品を使った防災行動をゲーム形式で学ぶ拠点の提供です。もう一つは、避難ルートをウォーキングコースに設定し、災害時に使用頻度が高いであろう公衆電話や消火器の使い方などを、屋外路面シートにしてウォーキングコースに配置します。最後は、プロの料理人監修の防災レシピの開発です。あまり美味しいイメージがない長期備蓄食品を、アレンジ次第で美味しく食せることをSNS等で発信するというものです。こうした取り組みを通じて、事業者によるフェーズフリー商品の開発を促す「１２：つくる責任、つかう責任」を、身近な食や運動による防災対応力の向上によって「３：すべての人に健康と福祉を」等のゴールを達成することをめざすことを意図しています。

プレゼンテーションを終えて（2024年１１月17日撮影）

文・全学教育推進機構　全学共通教育センター
特任准教授　岡村こず恵

＜参加学生＞
瀧川 真由 (甲南大学 法学部 2年次生)
神吉 理沙 (甲南大学 法学部 2年次生)
若槻 航太 (甲南大学 経済学部 2年次生)
中川 彩優香 (甲南大学 マネジメント創造学部 2年次生)
石井 宏樹(徳島市立高等学校 2年生)
風尾 沙良 (徳島市立高等学校 2年生)
五島 武蔵 (徳島市立高等学校 2年生)
中野 葉月 (徳島市立高等学校 2年生)

指導教員：甲南大学 全学教育推進機構　全学共通教育センター
特任准教授　岡村 こず恵