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被災経験と防災知識のバトンリレー ―甲南大学生が取り組む「ぼうさい授業」
2020年4月01日(水) 地域連携新着情報◆大学生が作る「ぼうさい授業」
私たち甲南大学生7名は、神戸市立魚崎中学校の2年生を対象とした「ぼうさい授業」を行うプロジェクトに参加した。「ぼうさい授業」とは、東京海上日動火災保険株式会社が地域・社会貢献活動の一環として、神戸市役所と甲南大学とで連携して、防災をテーマに行う出前授業のことである(図1)。その一部、体験型学習(ワークショップ)の部分を甲南大学生が約5ヶ月かけて企画した。
しかし、結論からいうと、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年3月13日に予定していた「ぼうさい授業」は中止となった。授業を実施することは出来なかったものの、プロジェクトを通してたくさんの学びを得ることが出来た。
◆地域の特性に沿ったワーク作り
私たちは、「自助(自分の身は自分で守る)」と「共助(周りの人と助け合う)」という二つのテーマを授業で扱うことにした。
まず、自助のワークでは、身近な場所に潜む危険を知ってもらうために、魚崎中学校の生徒が登下校で実際に利用するルートを取り上げてワークを作成した。また、魚崎中学校は沿岸部に位置するため、地震及び津波発生時の災害行動についても考えてもらうことにした。
一方、共助のワークは、災害時要援護者(さいがいじようえんごしゃ)と呼ばれる災害時に特に援助が必要な人(高齢者、外国人、障がい者など)に焦点を当てた。同じ地域で暮らす人の中でも特に気にかけて欲しい人々の存在を、中学生に知ってもらうことを目的とした。
これらは、フィールドワークに何度も出かけて、確認したまちの現状に基づいて作成した。実際に歩いてみると、身近な場所に、思いがけない危険が隠れていることを実感した。
◆楽しく学べるワークを作ろう!
防災というテーマを、身近に感じられない中学生もいるかもしれない。そのため、楽しく遊びながら学べるよう工夫した。長机いっぱいに広げられる大きな地図を作成し、避難ルートを書き込めるようにしたり、アイマスクや特製のメガネなどの小道具を多く使用して、災害時要援護者に必要な情報を実際に伝える体験ができるように工夫した(図2)。
神戸市危機管理室、くらし支援課、産学連携ラボや、東京海上日動火災保険のスタッフの皆さん、そして魚崎中学校の先生方に授業計画についてプレゼンテーションしたところ、「魚崎の身近な地域資源を具体的にふまえている」「大人でも楽しめる」と評価いただけた(図3)。
◆震災を知らない世代が伝える防災
阪神・淡路大震災での事例をベースに、東日本大震災での事例や、これから起こるとされる南海トラフ地震の被害想定を踏まえてワークを作成した。授業計画を作るに当たって、大きな災害の被災経験がない私たち大学生が中学生に防災活動の重要性を伝えることは、正直なところ、非常に難しかった。しかし、魚崎中学校や神戸市役所、東京海上日動火災保険の皆さんから助言をいただくことで、災害時の細かなリスクを想定できた。例えば、災害時に公衆電話が役立つことを授業で扱おうとしたが、「公衆電話の使い方を知らない中学生がいるかもしれない」と指摘を受けた時は驚いた。防災は、過去の経験と現状を掛け合わせて考えることが必要なのだと感じた。
阪神・淡路大震災から四半世紀が経った2020年。今回のプロジェクトで授業を実施することは出来なかったが、プロジェクトを通して防災について学んだことを次の世代へと伝えていきたい。
チームを代表して 文学部社会学科3年生 岩田萌花
【「ぼうさい授業2019」メンバー】
文学部社会学科 3 年生 岩田 萌花
文学部人間科学科 3 年生 青木 海都
経済学部経済学科 3年生 有働 晃一
経済学部経済学科 3年生 花木 純也
経済学部経済学科 3年生 濱田 純太
文学部人間科学科2年生 寺口 久美子
マネジメント創造学部マネジメント創造学科2年生 西出 未来
【指導教員】
共通教育センター 特任准教授 岡村 こず恵