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東京研修「刑事司法の運用現場を訪ねる」

2016年10月06日(木) 法学部新着情報
 9月14日から2泊3日の研修「刑事司法の運用現場を訪ねる」で、東京に行きました。
 最高裁判所、東京高等検察庁・法務省、国会議事堂(参議院)、立川拘置所、警視庁などを見学したほか、冤罪事件の当事者、弁護団のお話を伺う機会を得て、充実した3日間を過ごすことができました。
 
[写真①:新幹線の中で]
 
 一日目の早朝、新大阪に集合し、新幹線で東京に向かう総勢24名(1回生11名、2回生2名、3回生11名)。
東京に到着し、すぐに東京高等検察庁に向かいました。

 [写真②:検察庁・法務省]
 
 東京地検・東京高検・法務省は霞ヶ関にあります。
 東京高検では、現役の検察官の方から検察官の仕事について詳しくお話を伺うことができました。中でも「自白」がなぜ重要だと考えているのか、検察官の立場からのお話が印象に残りました。自白は、真実追究、被疑者・被告人の改善・更生と社会復帰、刑事司法全体のコスト削減、被害者等の保護などにも資する、という内容でした。その後、模擬取り調べ室にて、検察官の方から取り調べの始め方などについて、実演を交えてお話を伺うこともできました。
 
 二日目は、国会議事堂や最高裁を見学したあと、甲南大学の東京キャンパスにて、講師をお招きしてお話を伺いました。
  
 [写真③:桜井昌司さんのお話に聞き入る参加者]
 
講師は、桜井昌司さんです。
 桜井さんは、1967年に千葉県で発生したいわゆる「布川事件」で誤った有罪判決を言い渡されて服役後、再審請求を行い2011年に無罪判決をえて冤罪を晴らした経験を話して下さいました。
 桜井さんの事件の冤罪の最大の原因は、「虚偽の自白」でした。なぜ無実の人が自白をしてしまうのか。桜井さんは自分がどのように「嘘の自白」をしてしまったのかという経験をもとに、丁寧に説明して下さいました。
 人生に無駄なことはひとつもない、自分は冤罪で服役したけれども、その経験でさえ今は良かったと心から思っている――桜井さんの言葉は、心に深く突き刺さりました。
 夜は桜井さんも交えた懇親会。人生相談や恋愛相談まで、大いに盛り上がりました。

 
  
[写真④:桜井昌司さん(前列真ん中)と]
 
 そして、拘置所にも参観に行った最終日は、袴田事件弁護団の戸舘圭之先生の講義で始まりました。袴田事件は1966年に静岡県で発生した強盗殺人放火事件です。事件の犯人であるとして死刑を言い渡された袴田さんは無実を訴え続け、2014年にようやく再審開始決定が言い渡され、袴田さんは釈放されました(現在検察官は再審開始決定が不当であるとして、即時抗告をしています)。
 袴田事件でも、冤罪の原因のひとつは「虚偽の自白」でした。やはり無実の人が自白をしてしまい、検察官も裁判所もその自白が「真実である」と考えてしまったのです。
 戸舘先生は、なぜ袴田事件に関わるようになり、弁護士になったのか、学生時代にどのような勉強や経験をすれば良いのかなど、ご自分の経験に基づいてお話し下さいました。戸舘先生が弁護士を目指したきっかけは、大学生の時に袴田事件に出会ったことだそうです。

  
 [写真⑤:戸舘圭之先生(前列左から2番目)と]
 
 刑事司法に色々な立場で関わった方のお話を聞くと、同じ「自白」の問題についてであっても、それぞれの経験や立場によって捉え方が全く異なることがよく分かります。
「自白」は重要な証拠であると現在でも考えられてしまっているがため、同時にとても危うい証拠でもあります。なぜ無実の人が自白をしてしまうのか、虚偽の自白や冤罪を生まないためにはどうするべきか、そもそも取り調べや捜査はどうあるべきなのか、深く考える契機になりました。
 大学の教室だけではなく、外部に出て社会の色々な方のお話を聞く機会が学修のためにとても重要であることを改めて実感した、充実した三日間でした。
 
*桜井さんが、ブログ「獄外記」で学生との交流について書いて下さいました。>>>
 
*本研修は「甲南大学法学会」及び「甲南大学父母の会」の補助を受けて実現することができました。
 
文責:法学部教授 笹倉香奈